アイリッシュ・ウイスキー
アイリッシュ・ウイスキー(Irish whiskey)は、アイルランド共和国および北アイルランドで生産される穀物を原料とするウイスキーである。
法律によるアイリッシュ・ウイスキーの定義
- 穀物類を原料として使用する
- 麦芽に含まれる酵素(ジアスターゼ)により糖化し、酵母によって発酵させる
- 蒸留時のアルコール度数は4.8度以下
- 木製の樽に詰め、アイルランド共和国もしくは北アイルランドの倉庫で3年以上熟成させる
おすすめ情報
種類
| 名称 | 原料 | 蒸留方法 |
|---|---|---|
| ピュアポットスティルウイスキー | モルトにした大麦と未発酵の大麦やオート麦などを配合 | 単式蒸留器で3回行う |
| モルトウイスキー | 大麦麦芽 | 単式蒸留器を使用。蒸留回数は2回もしくは3回 |
| グレーンウイスキー | コラムスティルで蒸留する穀物(トウモロコシなど) | 連続式蒸留器を使用する |
| ブレンデッドウイスキー | 複数のモルトの原酒とグレーンの原酒 | - |
一般にアイルランドではシングルモルト(100%モルトにした大麦が原料のウイスキー)、ピュアポットスティル(モルトにした大麦としていない大麦を組み合わせたウイスキー)、ブレンド(モルトにした大麦と小麦のようなモルトにしない穀物をブレンドするウイスキー)のように数種類のウイスキーがある。
アイリッシュ・ウイスキーは大別して4種類の形態に分かれている。ピュアポットスティル(モルトにした大麦(麦芽)と、未発酵の大麦などを組み合わせたウイスキー)、モルトウイスキー(100%モルトにした大麦が原料のウイスキー。シングルモルトアイリッシュウイスキーとも呼ばれる)、ブレンデッド(モルトにした大麦と小麦のようなモルトにしない穀物をブレンドするウイスキー)、そしてコラムスティルで蒸留する穀物から作るグレーン・ウイスキーの4種である。
アイリッシュ・ウイスキーだけに見られるのが、ピュアポットスティルウイスキーである(100%大麦を使いながらモルトしたものとしないものを両方使い、ポットスティルで蒸留する)。「生の」モルトしない大麦を使うことで、ピュアポットスティルウイスキーをピリッとした味わいにし、これがアイリッシュ・ウイスキーを独自の味わいにしている。シングルモルトのようにピュアポットスティルは売られたりグレーンウイスキーをブレンドしている。蒸留所の責任者たちはピュアポットスティルウイスキーに強い愛着を持っており、この傾向はブレンデッドウイスキーが一般的になる160年代以降まで顕著だった。
ピュアポットスティルウイスキーの持つ価値が薄れ、アメリカの市場に向けてスコッチ・ウイスキーと同タイプの軽い味わいのブレンデッドウイスキーを生産する必要に迫られると、160年代から170年代の間にかけてブレンデッドウイスキーの生産が開始される。アイルランドで操業している蒸留所が少ないため、グレーンウイスキーと混ぜる原酒の種類はスコッチ・ウイスキーに比べて乏しいが、新ミドルトン蒸留所で作られるピュアポットスティルウイスキーを原酒とするブレンデッドウイスキーは、スコッチ・ウイスキーに無い独特の風味を持っている。
グレーンウイスキーはシングルモルトより軽く癖のない味わいで、1種類だけで瓶詰めすることはほとんど無く、ブレンデッドウイスキーの素材としてモルトウイスキーとブレンドして使っている。
特徴
製法
年間の気温差が小さく、冷涼で程よい湿度があるアイルランドの気候はウイスキーの製造に適している。
- 製麦。大麦を発芽させ、モルト(麦芽)に変える。モルティング。
- モルトの乾燥
- モルトの糖化、麦汁の精製
- 麦汁の発酵
- 蒸留、原酒の精製
- 原酒の樽詰め、熟成
- ボトリング
ウイスキーは以上の工程を経て完成する。単式蒸留器による3回の蒸留を行い、モルトの過程でピート[注 1]が使用されないことが、多くのアイリッシュ・ウイスキーに共通する特徴である。
モルトの際にはピートの代わりに石炭、木材が使用され、乾燥はキルトという炉の中で行われる。早期に醸造・蒸留産業が確立されたアイルランドでは、機械を使用して掘り出すピートよりも、木や石炭が燃料として使用されることが多かった。アイルランド人のイオニアス・コフィーが発明した連続式蒸留機(スコッチ・ウイスキーも参照)はアイルランドで紹介されたが、導入には賛否が別れた。時間をかけずに安価でウイスキーを生産できることを喜ぶ製造者がいる一方、アイリッシュ・ウイスキーの高級品としてのステータスの低下を危ぶむ者もいた。結局、連続式蒸留機を導入したのは一部の製造者だけであり、大半の蒸留所はポットスティルでの蒸留を続けたコフィーはスコットランドに活躍の場を求め、グラスゴー、エディンバラを中心とするローランド地方でコフィー式蒸留機が取り入れられ、ローランドでグレーンウイスキーの生産が開始された。
製造の過程で3回の蒸留が行われる理由については、原料にライ麦などの穀物を使うと穀物のフレーバー(香り)が強くなるため、蒸留の回数を増やして穀物のフレーバーを飛ばすためだと考えられている。そして、生産性を高めるために巨大なポットスティル(蒸留機)が使われるようになった。
ブッシュミル蒸留所、新ミドルトン蒸留所で行われる3回蒸留は、以下の手順に沿う。
- ウォッシュスティル:全留し、留液(ローワイン)を取り出す。
- フェインツスティル(ローワインスティール):1回目の蒸留で得られたローワインをアルコール度数の高いストロングフェインツと度数の低いウィークフェインツに分離し、ストロングフェインツを3回目の蒸留にかける。ウィークフェインツは次回の蒸留でローワインと混ぜられて再び蒸留される。
- スピリッツスティル:蒸留の最初と最後に出たスピリッツ(ヘッドとテイル)を除き、熟成に適した中留液を取り出す(ミドルカット)。ヘッドとテイルは次回の蒸留でストロングフェインツと混ぜられて再び蒸留される。
蒸留液のアルコール度数は約86度と、スコッチ・ウイスキー(約70度)に比べて高い。蒸留液に水を加えてオーク樽に入れ、通常は5年から8年の間熟成させる。樽はシェリー、ラム、バーボンの熟成に使われた古樽を使用し、3回使用された樽は廃棄される。
風味、香り
1800年代に麦芽にかかる税金が加増され、一部の蒸留所はモルトしていない大麦、ライ麦、小麦などの穀物の使用量を50%以上に増やして経費削減を図った。これが現在のアイリッシュ・ウイスキーのフレーバーを構成する要素の一つになり、グレーン・ウイスキーのルーツともなる。現在、原料の麦芽と大麦の比率は銘柄によって異なるが、一般にはモルトされていない大麦の方が多い。
アイリッシュ・ウイスキーは蒸留回数が多いために滑らかな味わいに仕上がり、ピートが焚かれないために原料の穀物が持つ芳醇な香りが引き出されている。生産国であるアイルランドのパブでは、アイリッシュ・ウイスキーはショットグラスでストレートのまま飲まれている。ほとんどのアイリッシュ・ウイスキーは、スコッチ・ウイスキーのようなピートに由来するスモーキーフレーバー(土煙の臭い)がない。その例外としては、クーリー蒸留所で作られる2回蒸留のカネマラが知られている。カネマラにはピートで焚かれた麦芽が使われているため、スモーキーフレーバーが含まれている。
アイリッシュ・ウイスキーの銘柄
ピュアポットスティル
- レッドブレスト(Redbreast(12, 15 yrs)):ミドルトン蒸留所製造。
- グリーンスポット(Green Spot)
- ジェムソン・ピュアポットスティル(Jameson Pure Pot Still):ミドルトン蒸留所製造。
シングルモルト
- ブッシュミルズ(Bushmills(10, 16, 21 yrs)):ブッシュミルズ蒸留所製造。
- ロックス8年(Locke's Single Malt(8 yr)):クーリー蒸留所製造。
- ターコネル(Tyrconnell):クーリー蒸留所製造。
- カネマラ(Connemara Peated Malt(Regular, Cask Strength & 12 yrs)):クーリー蒸留所製造。
- HENNESSY NA-GEANNA
おすすめ情報
ブレンド
- ロックス・ブレンド(Locke's Blend):クーリー蒸留所製造。
- Inishowen
- ミラーズ(Millars):クーリー蒸留所製造。
- Midleton Rare
- ブラックブッシュ(Black Bush):ブッシュミルズ蒸留所製造。
- ジェムソン(Jameson):ミドルトン蒸留所製造。
- パワーズ(Powers)
- パディ(Paddy)
- キルベガン(Kilbeggan)
- タラモア・デュー(Tullamore Dew):ミドルトン蒸留所製造。